Climb Ev'ry Mountain ~ An English teacher's blog~

just a memorandum of what I learn

ゼロからの「資本論」(斎藤幸平 NHK出版 2023)

商品の2つの顔 (pp.39-41)

「使用価値」

人間にとって役に立つこと(有用性)、つまり人間の様々な欲求を満たす力です。

「価値」

その商品を生産するのにどれくらいの労働時間が必要であったかによって決まる(労働価値説)。

資本主義社会では「価値」の側面ばかりが優先され、「使用価値」が蔑ろにされていく。

 

彼(マルクス)が何より問題視していたのは、構想と実行が分離され、資本による支配のもとで人々の労働が無内容になっていくこと /(中略)

マルクスが思い描く将来社会の労働者とは、「全面的に発達した個人」です。ネジを留めるだけ、金儲けをするだけの個人ではなく、構想と実行のどちらにおいても自らの能力を発揮し、一人ひとりが自身の労働力という「富」を活かしながら社会全体の富を豊かにしていく。そうすることで、私たちは互いに支え合いつつ、自律的に生きていくための能力や感性を取り戻すことができる。(pp.122-123)

 

20世紀に社会主義を掲げた国の実態は、労働者のための社会主義とは呼べない単なる独裁体制にすぎなかった。それは、資本家の代わりに党と官僚が経済を牛耳る「国家資本主義」だったのです。(p.165)

 

物象化(「価値」のためにものをつくるようになった社会で、人間がモノに振り回され、支配されるようになる現象)と脱商品化(生活に必要な財やサービスを無償でアクセスできるようにすること)という視点から考えると、福祉国家にはマルクスの考えていたビジョンと重なるところがあります。(中略)資本主義のもとでの福祉国家の方が、マルクスの考えに近いのです。(pp.172-173)

 

マルクスは賃上げよりも労働時間短縮を重視した。(p.180)

「ウィンドー・ショッピング」お金がなく外からブランド商品を見ていることを表すのではなく、日曜日にお店が閉まっているから、仕方なく外から眺めているのです。(p.181)

脱商品化と結びついた余暇が、非資本主義的な活動や能力開発の素地を育むのです。それが、さらなるアソシエーションの発展や脱商品化の可能性を広げていくことにもつながってきます。こうして、コスパ思考に回収されない、社会の富の豊かさが醸成されることになるのです。(p.181)